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2020-09-10 08:15:27

新型コロナウイルス対策(公衆衛生省記者会見ポイント:10日)


ベルギーにお住まいの皆様,及びたびレジ登録者の皆様へ

10日、公衆衛生省による記者会見が行われましたところ、主なポイントを以下のとおりご案内いたします。

(参考アドレス:ベルギー公衆衛生省による記者会見動画)
https://www.info-coronavirus.be/nl/live-pressconferences/

1.感染状況の概観
直近の7日間において1日あたり平均502人の新規感染者を記録,前週(同445人)から13%の増加となった。少し前から増加傾向にあり,一般的に全ての州において,主に60歳未満の層で観測されているこの増加傾向を引き続き注視する必要がある。
地域レベルにおいては,ブリュッセル首都圏が引き続き最も多くの新規感染者を記録しており,1日あたり平均132人,国レベルと同様の前週比13%の増加となっている。アントワープ州では再び増加傾向に転じ,1日あたり平均101人,前週(同80人超)から21%の増加となった。その他の州については,この増加割合は12%~33%と変化に富んでいるが,絶対数ではいずれもより小さい数字であり,この点でより大きな数値となっているのはブリュッセルとアントワープである。
新規入院患者数もわずかに増加し,1日あたり平均21名,前週(同16人)から28%の増加となっているが,絶対数では小さい数値での増加幅であり,パーセント計算ではより大きな影響に見えるという点に留意する必要がある。
死者数は1日あたり平均2名となっており,幸いにして前週(同4人)から50%の減少となった。

2.新型コロナウイルス対策の手段
新型コロナウイルスにより,数ヶ月前から我々の日常は大きく変化させられた。我々,特に脆弱な人々の健康を脅かすとともに,我々の生活の感情的・文化的・社会的・経済的側面に深刻な影響を与えた。呼吸器系を通じて伝染する感染症という文脈において,我々には4つの対策がある。
まずは,すでに数ヶ月前から実践している「社会的距離」,「社会的距離を取ることが困難なあらゆる場所における正しい方法でのマスクの着用」,「手の除菌」といった一種のパッケージである。これは将来いかなる措置の緩和があろうとも,今後数ヶ月に亘り引き続き続くものであり,次回の国家安全保障会議でもこの方策は変更されず,引き続き(ウイルス対策における)基盤となることは間違いない。
次に,対処療法,すなわち,効果的かつ許容可能,さらに可能なら、安価な薬による治療である。我々は,現時点においていかなる薬もこれらの条件を満たしていない。病状を変化させることができる薬はいくらかあるものの,健康上の悪影響なくウイルスを除去することができると言えるものは現時点では何もない。
3つ目の方法は,より脆弱な人々を守るために十分な集団免疫を獲得することである。この集団免疫については、様々な研究によれば,おおよそ60%~75%の者が,ウイルスから身を守る手段,例えばウイルスに対する抗体を有することになると推定されていたが、しかしながら、実際には,西洋においては、集団免疫の獲得を試みたストックホルムにおいてさえ,結果として60%~75%にはほど遠く、20%程度にしか到達することができなかったことを示している。数理モデル上では,この集団免疫という方法は,入院者数や死者数の面で大きな代償を払うリスクがあることが示されている。
4つ目の方法は,ワクチン接種である。特に治療法の存在しないウイルス性感染症に対するワクチンである。ワクチン接種は,個人及び集団レベルで抗体を可能な限り迅速・安全かつ効果的に獲得することを可能とする,ワクチンは,この手の感染症対策における基盤として,長年に亘り認められてきた。皆が知っている例としては,はしかやポリオが挙げられ,年配の方々は1950年代においてこれらのウイルスが猛威を振るい,1957~58年に導入されたワクチンがもたらした奇跡を覚えているだろう。
現時点では,新型コロナウイルスに対するワクチンは存在していないということを強調しなければならない。したがって,1.5mの距離を保ち,必要なときにマスクを着用し,手を消毒する,これらのことを当面の間続けなければならないことを改めて強調したい。

3.ワクチン開発について
将来的にベルギーに存在しうるワクチン候補の1つに関する情報がすでに出回っていることを承知していなかったが,ワクチンがどのようなものか,また,これらのワクチンがどのように開発されるのかを説明し,今朝の情報から生じる疑問に答えるのに,今が絶好の機会であろう。
1つ目の質問は,ワクチン接種がどのように機能するのかという問いに答えたい。おそらく医者や医療補助部門(paramedical)にとっては明らかであろうが,全ての人にとって明らかではないためである。ワクチンの原理とは,ワクチン摂取を受けた人の体内に細菌の一部を存在させ,これが免疫と呼ばれる防御手段を発達させることを可能にすることである。もちろんこのワクチンにより、患者が病気になるようなことがあってはならない。
いかなる場合にも、生きたウイルスや完全なウイルスを(ワクチンとして)使うことはなく,当然、我々を病気に至らしめることのない、ごく小さなウイルスの断片を使うこととなっている。
新型コロナウイルスの場合,世界中の研究者は,「抗原(antigene)」と呼ばれる、ウイルスの構造からはみ出た、針(スパイク)のようになっているタンパク質(「スパイクタンパク質」)部分を選んだ。。この突起部分が「王冠(コロナ)」の形をしていることから、「コロナウイルス」と名付けられた。このタンパク質は,ウイルスが我々の細胞に侵入する際に役立つ部分である。侵入することがなければ,必然的にウイルスによる被害は発生しない。
この選択は明らかなもので,細菌が体組織へ侵入することを防ぎ,ウイルスが被害をもたらすことを避けるために最良の部分である。強盗に例えれば,家の全てのものを壊して出て行く時に捕まえるより,そもそも家への侵入を阻止する方が良い。これがこの手のワクチン接種の原理であり,インフルエンザなどの他の感染症にも適用されるもので,入り口の鍵をブロックするよう試みることである。
では,このスパイクタンパク質を注入すると何が起こるか。治験の被験者の間での最初の結果が示すように,我々の免疫システムが,このスパイクタンパク質,さらにはその背後にあるウイルス本体に対し、二つの方法で反応することが期待される。
一つ目の方法は、抗体を発達させることである。この抗体は,ウイルスをブロックし,細胞や体組織への侵入を防ぐ働きをするタンパク質である。これは大部分のワクチン開発における基本的なポイントである他方、これが重要なことであるが,抗体は一部の白血球を活性化させる。白血球は,ウイルスに感染した細胞が倍増しないように,これらの細胞を蘇生させるか,または消滅させる一種の武器である。白血球はウイルス感染との闘いにおいて重要な要素であり,第一の治験結果が示すように,ワクチンがこの防御システムをもたらすことが期待される。
次の質問は,ワクチン開発の過程で,我々は今どの段階にあるのかという点。2月または3月の感染拡大が始まった瞬間から,ワクチン候補を得るための国際的研究が開始された。今や複数のワクチン候補が臨床開発段階に到達し,人体に対する治験が行われている。これらの研究はより迅速に行われているが,臨床実験過程の管理に管理必要な措置無しに進められることはない。
ワクチン開発における実験フェーズの移行に際し,リスクを冒すことはしない。第一フェーズでは,数十人の被験者にワクチンが注入され,ワクチンの適切な摂取量を探し,明確な副作用が無いことを確認する。このワクチンが許容可能かつ抗体の生産に成功すれば,第二フェーズでの試験を行う。この第二フェーズでは,同様の試験を数百人に対して行い,より正確なワクチンに対する耐性の傾向や抗体生産効率などを把握するよう試みる。第三フェーズについては,より開発が進展している一部のワクチン候補についてはすでにこの段階にあるが,ワクチン接種を受けた人々が,実際に病気から守られることが示されることが期待される。
もちろん意図的に病気を引き起こすことはしないが,この研究は世界の未だ多く病気が存在している場所で行われ,ワクチンの潜在的効果を得られた人と得られなかった人の比較も行われる。
この研究は,数万人単位で行われる。現時点で開発が最も進展しているワクチンについては,すでに(被験者として)3万から9万人に及んでおり,ワクチンの有効性に関する完全な証明を得るために,多くの人々が検査に関与している。
ベルギーにとって最初のワクチンとなる可能性があったあるワクチンについて,現時点で原因不明の副作用がイギリスの被験者に表れたことにより,試験が中断されたことをご存じであろう。他方、このことにより、研究が真剣に行われていることが強調される、と述べたい。すなわち、全てのウイルス試験においては,当該企業と何の関係も無い独立した委員会が存在しており,研究データ及び副作用を追跡している。そしてこの委員会が,「原因不明の何かが起こっているため研究を中断するべき」だとのシグナルを出し,数日あるいは数週間に亘って,この副作用がワクチン接種と何らかの関係があるかどうかの確認を行う。
AstraZenecaのワクチンについて起こったことは,多くのワクチンについても毎日起こっていることであり,後者は単にメディアに取り上げられていないだけである。したがって,これは極めて普通の手続きであり,より速やかに準備されつつあるこれらのワクチンについても,正しく状況がフォローされていることを示している。
感染拡大の特殊な背景において,我々は古くから存在し、「気ままに」ワクチンを探し求める病気と向きっているわけではなく、緊急的な状況にあり,これまで研究者と製薬業界,医療機関との間で特別な協力・協調が行われてきた。これにより,事務的に無駄な時間を排し,研究の様々なフェーズにおける所要期間を大幅に短縮することが可能になった。通常3~6年かかる研究を,6ヶ月で行うことができた。本来重苦しく時間のかかる事務手続に慣れた仕組みにおいて,オンラインでの結果の共有や議論を行う努力を行い,(時間短縮を)実現できたことは特筆すべきことである。
かかる取り組みは(感染拡大)当初から行われてきたことであり,今後も続けていく。なぜなら,第三フェーズにおいても,引き続き何が起こったか把握するために(研究を)停止しなければならない可能性もあるからである。このようにして,世界ではすでに(治験を受けている)数万人(3万~9万人)について観察が行われ,国際・欧州・米当局などの承認を経て様々な国でワクチンが実際に国民に開放された暁には,最低でも6ヶ月間は経過観察が行われることとなる。
ワクチン開発にあたって、すべてがうまくいけば、春すなわち3月中、または3月末にもベルギーにおいてワクチンを入手できることが期待されており,何よりそれより前に欧州または米といった他の国でワクチンが入手され,ベルギーの前に,すでに他国で10万~100万人の人々がワクチンを得る可能性も高い。このワクチンに何を期待できるか。明らかなのは、ワクチン接種が感染症に対する完全な防護を与えるか,あるいは,単に重症化を回避する効果を与えるか、ということである。
また,ワクチン接種により,個人の(抗体による)防護レベルとは関係なく,呼吸器系におけるウイルス保菌を回避することも可能となろう。これは重要な点であり,なぜなら,たとえ症状がなくても,自身を経由してより脆弱な人々に感染させる可能性があるからである。
他方で,本当にこれらの防護システムを得られるのかどうかについてはまだ何も分かっておらず,これを把握することが現在行われている研究の一つの目的である。これらの研究を通じて,我々は防護がどのようなものであるか,またワクチンによって与えられる防護の強さ,さらには防護の有効期間を把握しようとしている。
それではベルギーでは誰がこのワクチンを得ることになるのか。3月または4月に優先的にワクチン接種対象となりうるのは誰か。おそらく,皆このワクチンに対する膨大な国際的需要が生じることを懸念しているだろう。
AstraZenecaのワクチン研究に何の問題も無ければ,春にはベルギーにおいて最初の750万回分のワクチンが得られる目処が立っているが,3月中に全てを得られる訳ではなく,おそらく150万回分といった程度となる。したがって,まず誰がワクチン接種を受けるべきなのか,知っておかねばならない。すでに上級保健会議(Conseil superieur de la sante)研究を行っており詳細についてはインターネットサイトを参照してほしいが、同研究によれば、欧州や米,豪など全ての国において,ワクチン接種を受ける最初のグループは,より感染のリスクに晒されると同時に,感染拡大の文脈でワクチンが必要となるグループである,医療関係者及び医療補助部門などの医療関係者である、とされている。
続いて,より脆弱な人々である。主に65歳以上の(特に持病を持つ)高齢者,次に,潜在的な病を持つ45~65歳の人々である。潜在的な病とは具体的には,糖尿病,肥満症,高血圧,慢性疾患,心臓病などが挙げられる。おそらく他のグループもあるだろうが,ワクチン開発の進展及びそれに伴う知見の蓄積に応じて定義していくことになろう。
全員にとって明確でなければならない点として,これらのワクチンは厳密には特定のリスクが存在しない人々には提供されないということである。健康な大人へのワクチン提供は,高リスク及び感染リスクに晒された人々へのワクチン接種が可能となった後になるだろう。ワクチンの完成を待つ間は古典的な防護措置に注意を払いつつ,(ワクチン供給開始の予定時期まで)まだ数ヶ月残されているが,ワクチンについてはまた他の機会にもお話することを約束する。

4.質疑応答
(問)新規感染者数の増加が確認されているが,ウイルス検査の実施数も同様に10%増加している。感染者数の増加は検査数の増加が原因なのか,それとも他の潜在的な理由が考えられるのか。
(答)新規感染者数の増加分のうちの一部については,検査数の増加に関係していることが明らかである。約2.6%と安定している陽性率(注:検査実施数に対する陽性者の割合)もその証拠である。しかしながら,一部について,例えば赤ゾーンへの渡航,あるいは地域においても措置が完全に守られていないことに関係している可能性は否定できない。確実なことは,これらの陽性結果が生じているのは主に比較的若い層であり,深刻な病状に陥る可能性は低いということである。

(問)新型コロナウイルスにより病気になった人々は,現在では特に病状または治療法について知見が蓄積されているため,それほど深刻な状態に陥らないと言えるか。
(答)主に現在入院している人々は,3月~5月の期間に入院していた人々よりも若い層であり,潜在的な病気があるケースが少ない。また,特に数ヶ月前からウイルスによる炎症を和らげるコーチゾンやデキサメダゾンに基づく治療を加えるなど,よりうまくいく可能性の高い治療に関する知見が蓄積されている。

(問)直近の7日間について,ブリュッセル首都圏地域において、新規感染者数が10万人あたり50人以下の水準が維持されているのは、19のうち3つのコミューン(市)のみである。また,コミューンの半数は新感染者数が10万人あたり75人以上となっているが,ブリュッセル首都圏地域にとって最悪の状況と言えるか。
(答)まずこの指標は7日単位ではなく14日単位で機能している点を訂正させていただく。次に,ブリュッセル首都圏は全体として14日間で10万人あたり50人以上というレッドゾーンにあるということが実態である。

(問)検疫期間の短縮について多くの質問がある。このような措置のリスクは何か。
(答)ウイルスを保菌した場合,仮にウイルスが発達すれば95%の確率で14日の間に発症することが分かっている。発症しなければ,同期間(14日)の間,単なる保菌者となる。もし14日間となっている現在の検疫期間を短縮すれば,当然,まだ生きたウイルスを持っている人々を10日あるいは12日の時点で見失ってしまうことになる。したがって,10~20%あるいはそれ以上の割合でウイルス保菌者を見失うことになる。
他方で,検疫期間を短縮し,場合によっては5日目あるいは7日目に検査を行い,14日間という比較的長い制限に比して,より制限の弱い措置にすることで,各種措置への理解及びその遵守状況の改善も可能であろう。この点については科学的見地から現在議論が行われており,その科学的勧告に基づき,最終的には政治が決定することになろう。

5.その他
次回の記者会見は11日(金)。


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ベルギー国立公衆衛生研究所では,新型コロナウイルスに関する以下の情報を公表しています(毎日正午に更新)
■感染者数
https://datastudio.google.com/embed/reporting/c14a5cfc-cab7-4812-848c-0369173148ab/page/tpRKB
■入院/退院者数
https://datastudio.google.com/embed/reporting/c14a5cfc-cab7-4812-848c-0369173148ab/page/uTSKB
■死亡者数
https://datastudio.google.com/embed/reporting/c14a5cfc-cab7-4812-848c-0369173148ab/page/QTSKB
■コミューン毎の状況
https://datastudio.google.com/embed/reporting/c14a5cfc-cab7-4812-848c-0369173148ab/page/giyUB
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【お問い合わせ先】
在ベルギー日本国大使館
住所:Rue Van Maerlant 1, 1040 Bruxelles, Belgique
電話:(02) 513-2340, 500-0580(領事部)
Fax :(02) 513-4633
ホームページ: http://www.be.emb-japan.go.jp/japanese/index.html

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