感染症のアレコレ


日本人は感染症への認識が薄いと言われていますが、あなたは感染症についてどのくらい知っていますか?
感染症にもたくさんの種類があり、重いものだと死に至る感染症もあります。海外では日本にはない(かかる可能性が少ない)感染症も多いことから、海外渡航する際にはトラベルワクチン (予防接種)を受ける必要があります。感染症にかかってから情報収拾するのではなく、感染症にかかる以前に知っておくべきこと、海外に行かれる方は渡航前に行く地域でかかる恐れのある感染症海外の病院について知っておいたほうが良いことがありますので、感染症のことを知ってもらい、渡航前の参考にして頂ければ良いなと思っております。海外で使える!英会話、英単語集こちらにも"海外と日本の病院・クリニックの違い"について書いておりますので、ご参照ください!

感染症とは

感染症とは、環境中に存在する病原体の微生物が、ヒトの体内に侵入することで引き起こす疾患です。私たちの周りには目に見えない多くの微生物が存在しており、その中で感染症を引き起こす微生物を病原体と呼びます。
感染は、病原体が人間の体内に侵入し、定着、増殖することで成立します。感染しても症状が現れる場合と、はっきりとした症状が現れない場合があります。はっきりとした症状が現れない場合だと、知らない間に病原体を排泄し、感染源となって感染を広げる可能性が高いということです。

感染源について

病原体に感染した人・動物・昆虫や、病原体で汚染された物や食品が感染源となります。感染した人・動物などからの排泄物、嘔吐物、血液、体液や、彼らが触れた物や食品などが感染源となります。感染源を隔離したり、消毒することが有効な対策方法ですが、病原体に感染していても発症しない場合もあるので、十分な対策ができない場合があります。

感染経路について

日常生活において注意すべき感染経路としては主に、接触感染飛沫感染空気感染経口(糞口)感染の4つが挙げられます。

  • 接触感染は、皮膚や粘膜の直接的な接触や、手、ドアノブ、手すり、便座、スイッチ、ボタンなどを介しての接触で病原体が付着することによる感染のことです。

  • 飛沫感染は、咳、くしゃみや会話によって飛んだ唾液に含まれる病原体を吸収することで引き起こされる感染症です。飛沫の届く範囲は感染源から1〜2m程度と言われており、マスクの着用や感染源から距離を取ることが有効な対策となります。(飛沫感染で起こる疾患の代表・・・インフルエンザ・風邪・おたふく風邪・風疹など)

  • 空気感染とは、飛沫に含まれる水分が蒸発した直径0.005mm以下の粒子を飛沫核といい、空間に浮遊して広範囲に広がります。病原体は埃と共に浮遊し、これらを吸収することでノロウイルス、麻疹ウイルス、結核菌などが空気感染によって感染します。

  • 経口(糞口)感染はウイルスに汚染された食べ物を生で食べてしまったり、十分に加熱しないで食べた場合や、感染した人が調理中に手指等を介して食品や水を汚染し、その汚染食品を食べたり飲んだりした場合に感染します。便が手指を介して経口摂取される場合を特に糞口感染といいます。

他にも、母親から胎児・新生児に、胎盤や母乳などを介して病原体が直接伝わる母子感染(垂直感染)もあります。

海外でかかる恐れのある感染症

【A型肝炎】・・・汚染された食べ物などを摂取することによるかかる感染症。ウイルスが人の手を介して野菜・果物・魚介類・水・氷を経て口に入ることで感染します。また、性的接触による感染もあります。

【コレラ】・・・コレラ菌に汚染された水や食料を摂取することによって感染します。感染すると、発熱や腹痛が起こる場合もありますが、ない場合もあります。重症だと米のとぎ汁のような大量の「水様下痢」が排泄され、すぐに治療をしないと死亡する可能性があります。下痢止めなどでは効果は全くありません。

【狂犬病】・・・犬だけでなくヒトを含めた全哺乳類が感染する可能性があり、発病するとほぼ100%で死に至ります。ウイルスは感染動物の唾液に含まれ、咬まれたり、傷口、粘膜を舐められることで感染します。感染したら、発熱・頭痛・全身倦怠・嘔吐などを引き起こします。もし咬まれたりなどしたら、すぐに病院で診てもらいましょう。

【マラリア】・・・マラリアは、世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行しており、マラリア原虫をもった蚊に刺されることで感染します。1〜4週間ほどの潜伏期間の後、発熱・頭痛・嘔吐・関節痛・筋肉痛などの症状が出ます。マラリアには5種類あり、その中の熱帯熱マラリアは発症から24時間以内に治療しないと重症化し、死に至ることもあります。

【デング熱】・・・ウイルスをもっている「ネッタイシマカ」「ヒトスジシマカ」などに刺されることによって発熱・頭痛・関節痛・発疹などの症状を起こします。人から人への直接感染はなく、人→媒介蚊→人→媒介蚊と感染していきます。マラリアと同じく熱帯・亜熱帯地域を中心に流行しており、死亡率は低いですが、ワクチンや治療法がないので蚊対策をしましょう。

【破傷風】・・・破傷風菌は世界中の土の中にいます。傷口から破傷風菌が入ることにより、口や手足、体にしびれが起こる感染症です。その後、口が開けにくくなったり体が痛いなどの症状が現れ、全身が弓のように反っていき、呼吸困難で死に至ります。破傷風菌は極めて些細な傷口からでも侵入すると考えられており、侵入部位が特定されていない報告事例もある様です。

【B型肝炎】・・・DNA型ウイルスであるB型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされるウイルス性肝炎です。HBVは血液・体液を介して人から人へと感染し、感染した時期や感染者の免疫状態によって一過性感染に終わるものと、持続感染するものとに分かれます。。感染してから90〜150日は症状がなく、その後倦怠感・食欲不振・吐き気・嘔吐などが起こります。

【C型肝炎】・・・ウイルスに汚染された医療器具や輸血用血液の使用、器具を用いて皮膚を傷つける行為(刺青・ピアスの装着・鍼)によりうつります。食欲不振・腹痛・倦怠感・色の濃い尿が出たりなどの症状がありますが、ほとんどの人が感染してしばらくは無症状です。ですが、感染した人8割程度が慢性肝炎となり、長い時間をかけて肝硬変や肝癌へと進行します。

【HIV感染症】・・・HIVウイルスに感染した人の血液・母乳・精液・膣分泌液などの様々な体液での接触により(主に性的接触)感染します。食品を共有したり、握手などで感染することはありません。HIVウイルスが体内に入ると、人間の免疫を徐々に破壊していき、他の病気に対する抵抗力がなくなって色々な病気にかかります。病気が進行すると死亡することがあります。

各感染症について詳しい情報がこちらに記載しておりますので、ぜひご覧ください。

感染症にかかったらどうなる?

「海外でかかる感染症にはどんなものがあるの?」で読んでいただくと、感染症によって様々な症状ですよね。1番危険度が高いのが狂犬病です。発症したらほとんどが死に至ってしまうという恐ろしいものです。破傷風も死に至る可能性がありますので、十分に気をつけていただきたいと思います。
私たちが普段生活をしている中で何ともないようなことが、海外では違ったりします。海外と日本では異なる風土・気候の為、「生息している病原体が異なる」「衛生状態が異なる」「食事や飲料水が違う」などの理由で感染症にかかる恐れがあります。また、海外旅行では時差や気候の違いなどから、自覚していなくてもさまざまなストレスを受けています。その結果、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなってしまうので注意が必要ですね。

海外で感染症にかかったとき

まず基本としては、トラベルワクチンを受けることです。予防接種を受けずに行くと感染する可能性がかなり高くなるので、長期滞在予定の方は必ず受けましょう。
海外では水や食べ物による「下痢」になる方が多いので、すぐに対応できるように使い慣れた薬を持参しましょう。

薬局の場合

  • 認可を受けた薬局で購入すること。(世界の多くの地域ではニセ薬が問題となっています。ニセ薬を買ってしまう可能性は、アジア等の特定の地域では30%以上。また、効果の薄い医薬品も出回っているので注意が必要です。)

  • 極端に安い薬を買わないようにしましょう。(ニセ薬の可能性が高いからです)

  • 錠剤やカプセルをバラ売りで買う場合には、元容器を見せてもらい、写真を撮るなどしてください。商品名・製品番号・有効期限を記録しましょう。

  • 箱入りの薬については、添付文書がついていることを確認し、受診の際には持参できるようにしましょう。

個人使用目的であれば海外で購入した医薬品を日本に持ち込むことは可能ですが、安全性・有効性について日本で確認されているわけではないので、そのリスクを踏まえて使用する必要があります。それを考えたら、万が一を考えて日本から薬を持っていった方が安全面のリスクが低いと思われます。

病院・クリニックの場合

万が一のことも考えて、滞在先の近くに病院・クリニックがあるか、日本語の通じる病院があるのかなどを渡航前に調べておくことをおすすめします。

どこの病院に行ったらいいのか?

  • 加入している海外保険会社のアシスタントサービスを利用し、病院や医師を紹介してもらう

  • 宿泊先のフロントに連絡し、病院を紹介してもらう

  • ガイドブックや空港にあるタウン情報に掲載されている病院に行く

  • 現地の日本大使館や領事館の連絡先を控えておきましょう。最悪の場合、相談することが可能です。

海外の病院にかかるのに必要なもの

  • 慢性疾患等をお持ちの方は、薬剤の一般名も記載された処方箋のコピー(英文)を持参しましょう。(あらかじめ準備ができなかった場合には薬本体を病院に持参すると良いでしょう。)

  • 念の為、日本での現地在住の家族・友人、日本のかかりつけ医・かかりつけ病院の連絡先などを英語でまとめておきましょう。

Photo by Zhen Hu /unsplash

日本では健康保険により自己負担が抑えられますが、海外で病気や怪我の治療を受けた場合、日本に比べて医療費が高額になるケースは少なくありません。救急車を呼ぶだけでも費用がかかる国や、医療費自体が高い国もあります。日本では当たり前なことも、国によって医療事情が変わってきますので事前に調べておくことが大切です。
海外で病気や怪我の治療を受けた場合でも、日本で加入している保険が利用できることがあります。また、加入している健康保険から海外で支払った医療費の入部払い戻しを受けられる「海外医療費制度」もあるので、渡航前に要チェックしておきましょう。

引用
感染症予防接種ナビ:http://kansensho.jp/sp/
厚生労働省検疫所 FORTH:https://www.forth.go.jp/index.html