体験インタビュー(後編)


海外渡航する方必見!海外で感染症にかかった壮絶な体験談(後編)

世界一周の旅の最中にマラリアに感染し、ホンジュラスの病院でICU(集中治療室)に入院した野澤健さん。野澤さんが海外渡航をした理由、感染症の発症〜病院に行くまでの経緯が前編での内容となっております。
この後編では恐ろしいマラリアの症状、ホンジュラスの病院の様子や入院費用などを詳しくお話して頂きました。ぜひ前編も合わせてご覧ください。(前編はこちら

※ 各国の感染症の発生状況や医療機関の状況は、当時とは変わっている場合があります。最新の情報は記事の以下に記載したリンクを参照する、医療機関へ相談するなどしてご確認ください。外務省『世界の医療事情』

◾️「大丈夫だろう」はやめよう!死に至ることもある感染症の実態

ー ホンジュラスの病院にはどのくらい入院されていたのでしょうか?

ICU(集中治療室)に5日間、そのあと一般病棟に移って8日間程度いたので、合計2週間くらい入院していました。
マラリアの中でも何種類かあるのですが、僕が感染したのは「熱帯熱マラリア」という一番致死性が高いものでした。少し回復してきた時に「もう1日対応が遅れていたら死んでた」と言われて・・・そのくらいの状況だったみたいです。

ー 海外でICUに入るのは大きな不安があったと思うのですが、、、

本当に危険な状態だったらしく、大使館から直接実家に連絡があって、両親がホンジュラスまで来てくれました。両親が来るとわかったときはものすごく安心しましたね。それ以前は不安よりも辛いが大きくて、”この状態から抜け出したい” ”死んだほうがマシ”と思うくらいでした。インフルエンザの症状が何倍も辛くなった感じというか・・・言葉で表現するのが難しいですね。

ー 覚えていらっしゃる範囲で結構ですが、当時どのような症状が現れたのでしょうか?

一番は高熱でずっと40度近い高熱が出ていました。“痛い”などの症状はあまりありませんでしたが、症状が進むにつれ内臓器官に影響が起きていたという感じでした。
マラリア原虫が体の中で赤血球を破壊しながら増えていくのですが、その過程で放出されたものが血管を通って肝臓・腎臓に集まって詰まりを起こし、機能が低下してしまうようです。僕は腎臓に影響が出たためうまく排尿ができず、水分が体内から排出されないため顔がまん丸になってしまいました。
ケースによっては脳の血管が詰まり脳障害が起きることもあるようです。僕の場合、脳の方は大丈夫だったのですが肝臓・腎臓に影響が出て、透析や輸血を大量に行いました。輸血をする際には協力隊の人が献血に来てくださり、今でも本当に感謝しています。

(こちらは実際に野澤さんが入院していたホンジュラス・テグシガルパの病院)

僕のかかったホンジュラスの医療機関は、国内でも最高水準の医療機関でした。ただ適切な治療薬がなく、大使館の方がアメリカから取り寄せてくれたようです。一刻を争う症状だったので、アメリカに搬送するかどうかという話もあったと聞きました。

ー どのように病院とコミュニケーションをとられていたのですか?

僕の場合は症状が進んでいて意識がないこともあったので、、、
お医者さんとの会話や病院での対応は青年海外協力隊の知り合いが間に入ってくれました。その方が現地の医療機関や大使館など色々なつながりがあったことは大きかったです。もしその知り合いがいなかったらと思うと・・・。

ー 意識が朦朧としている感じだったのでしょうか?

そういう時間が多かったですね。一方で夜は高熱で寝れなくて、それも辛かったです。

◾言葉の壁もストレスの一つに・・・

ー ホンジュラスの病院の食事や様子などを教えていただけますか?

最初は全く食べられる状態ではなかったのですが、後半の方はだいぶ回復していたので食事が出てきました。やはり日本と違うのでおかゆなどはなく、”オートミール”という初めて食べるようなものが出てきましたね。あまり美味しくなかったです。(笑)
看護師さんの対応も日本とは違いますし、言葉が通じないのがとてもストレスでした。スペイン語は少し学んでいたので最低限の挨拶くらいは分かりましたが、看護師さんとの会話もままなりません。知り合いが通訳として入ってくれたものの、病気の症状を外国語で説明するってすごく難しいんですよね。言語の問題からくるストレスはとても大きかったです。

◾︎絶対に忘れないで!海外旅行保険と感染症を予防する大切さ

ー ホンジュラスの病院を退院してから日本では何か処置はされたのですか?

退院した頃にはだいぶ回復していました。飛行機で移動できるくらいの体力があるだろうという現地の判断で、アメリカ経由で日本まで帰りました。日本の病院でも2週間くらい入院していたのでホンジュラスと合わせたら全部で1ヶ月以上入院していました。

ー 日本の病院ではどう過ごされたのですか?

実家が愛知県なので名古屋の感染症の対応ができる病院に入院し、隔離病棟に入りました。隔離病棟といっても入室の制限が厳しいというだけで、あとは一般の病棟での生活とあまり変わりはありませんでした。日本で入院していた頃にはだいぶ回復していたので、あとは体力の回復待ちだったのと、体に残っているマラリア原虫が全部いなくなるかどうかの経過を見ていました。

ー 入院費用など、どのくらいかかりましたか?

費用については、直接自分で対応できる状態ではなかったので正確なことはあまり分からないのですが・・・ホンジュラスの病院だけでだいたい200万円だったそうです。海外旅行保険に入っておらず、クレジットカードの保険があと1週間で切れるというギリギリで使え、半額に抑えられました。カードの保険がなければ単純に倍ですし、アメリカに緊急搬送されていたら桁が違っていましたね。

ー なぜ海外旅行保険に入らなかったのでしょうか?

「大丈夫だろう」と思っていたんでしょうね。旅先に現地の知り合いがいるという安心感もあったと思います。

ー 海外渡航をする前に予防接種などはしましたか?

黄熱病の予防接種は旅の途中に中国で受けました。旅先でマラリアがあることも知っていて、現地の知り合いにも「気をつけたほうがいいよ」と言われていたので、かなり防御はしていました。マラリアには予防接種がないので予防薬になります。予防薬では100%の予防にはなりませんが、でもちゃんと注意をしていれば大丈夫と思っていましたね。それでもし感染症にかかってしまっても、早めに処置すればいいという考え方でした。
ソロモン諸島から出る日に知り合いから、念のためということでマラリアの薬を1錠もらっていました。ですが、いざ体調が悪くなったらそのこともすっかり忘れていたので、もっと早くに飲んでいれば少しは違ったかもしれません。本当にいざというときには、余裕がなくなること、予め備えておくことの大切さを痛感しました。

ー 取材を終えて ー

このような体験をされた方にお話を伺うことができ、とても貴重なお時間となりました。お話を聞いている時から、”もし自分にこの出来事が起きたら・・・”と考えていたらとても恐ろしくなりました。
病院に行く時は不安や心配事が少なからずありますが、異国で、なおかつ知らない言語でのやりとりとなると、想像以上の不安があると思います。野澤さんの場合は青年海外協力隊として派遣されており、医療機関や大使館などとネットワークのある知り合いの方がいた為、スムーズに対処をしてもらえたのだと思います。これはかなりレアなケースです。
予防接種に行くという行為を億劫に感じるかもしれません。それを怠ったが為に命を落すことになったり、高額の治療・入院費が発生したら代償が非常に大きいです。この記事を読んだ方に感染症への危機感を持って頂き、「予防接種へ行こう」とアクションをしてもらえたらいいなと思います。